| 代表的な作品としては、「恨みの賦」「別れの賦」や「雑体詩」30首が挙げられる。 |
| 前2者は、賦という事物を羅列的に描写する叙事を本領とする文体で、恨みや別れの思いといった情感を様々な角度から描写するというものである。 |
| このような情感の描写に主眼を置く叙情賦は、六朝時代の他の文学者の作品にも一定数存在しているが、その中でも江淹の2編は代表的な作品と目されている。 |
| 後者は漢から宋までの代表的な詩人30人を選び、彼らの代表作の文体を模倣した連作詩で、一種のパスティーシュである。 |
| このような歴史上あるいは同時代の文学者の作品を模倣した擬古詩・模擬詩というジャンルは、江淹以前の多くの詩人たちによって制作されているが、いずれも単発的なものであり、江淹のように歴代の詩人の文体を網羅的に模倣するという行為はそれ以前には見られない。 |
| また江淹には「雑体詩」以外にも、「阮公に効(なら)う詩」15首や「魏の文帝に学ぶ」という模擬詩があり、現存する詩約100首のうち半数近くがこれらで占められている。 |
| さらにその模擬詩は、。 |
| 「文通は詩体総雑、摹(模)擬に善し」(梁の鍾嶸『詩品』)。 |
| 「擬古は惟(こ)れ江文通最も長ず。 |
| 淵明に擬すれば淵明に似、康楽に擬すれば康楽に似、左思に擬すれば左思に似、郭璞に擬すれば郭璞に似たり。 |
| 独り李都尉に擬する一首、西漢に似ざるのみ」(南宋の厳羽『滄浪詩話』)。 |
| などと評されるように、同時代および後世の人々によって高く評価されている。 |
| このように模擬詩というジャンルを自らの詩創作の主体とする行為も、他の詩人には見られない独特のものである。 |
| 江淹は「雑体詩」に序文を著しているが、要約するとそこには、。 |
| 「当世の人々は自らの狭い了見によって文学作品に毀誉褒貶を加えているが、実際にはどの作品にも独自の良いところがあるのである。 |
| その文体を真似することによって、作品の個性を明らかにしてみたい」。 |
| という趣旨が書かれている。 |
| このように江淹は歴代の詩人たちの特徴や個性を明らかにするため、文学批評の一種としてこれらの詩を創作したことを表明している。 |