| ;『フンボルト』(1938年7月、弘文堂書房)。 |
| 田邊元監修の「西哲叢書」の1冊として出版。 |
| 泉井が世に表した第1作といってよい。 |
| ヴィルヘルム・フォン・フンボルト(1767-1835)の生涯を、その時代とのかかわりを通じて詳説したもの。 |
| 単なる伝記ではなく、特に「言語研究」と題した127ページからの後半は、フンボルトの言語研究の成果を、泉井自身の言葉であらわした個性の強い、しかし客観性を失わない作品といってよい。 |
| 『言語研究とフンボルト』(1976年11月、弘文堂)は、本書の補充・改訂版である。 |
| ;『言語の構造』(1939年8月弘文堂書房、1967年紀伊国屋書店)。 |
| 古今東西の多くの言語を習得した泉井が、「言語の構造とその機能は、先ず理論的に予設せられた如何なる合理的な「体系」にも、常にははまり切らない」(1967年版まえがき、ii)との考えから、多くの実例と深い思考をもって、言語の実際に立ち向かった著書である。 |
| そして、「おおくの種々姓にわかれる世界の新古の言語の下に、やはり1つの人性の言語としての大きな統一がある」、つまりフンボルトの言う「一つの言語」(EineSprache)を認めないではいられない。 |
| (同133頁)。 |
| 本書は、極めて抽象的な「空論」に満ちた著作の逆であり、本書で挙げられる実例は日本語・印欧諸語はもちろん、中央オーストラリア・アランタ語、ジョルジュア(グルジュア)語、アラブ語、トラック諸島の言語にまで驚くべき広がりをもっている。 |
| 1967年版には、「二重主語の構文と日本語」「言語年代論批判」「上代日本語における母音組織と母音の意味的交替」の3篇の論文も収められている。 |
| ;『言語学論攷』1944年1月、敞文館。 |
| その後『一般言語学と史的言語学』と改題。 |
| 泉井がそれまでに発表した論文・雑記などをまとめた論集。 |
| 若き泉井がいかに言語と言語学に取り組んでいたかを知るうえでも、興味深い論集である。 |
| たとえば、論文「最近佛蘭西言語学界の展望」は、フランス言語学会の趨勢を記述したものだが、泉井が史的言語学をはじめ一般言語学、特殊言語学、音声学をはじめ、中国音韻学の進展まで正確に把握していたことは、当時の通信事情を考えると、驚くほどである。 |
| (なお、本論には、泉井がついにまみえることのなかった師、アントワーヌ・メイエ〔1868-1936〕の追悼文も収録されている)。 |
| また京都帝国大学の卒業論文『印欧語におけるインフィニティヴの発達』も収録する。 |
| 新村出教授に提出されたこの卒論に対して泉井は相当な自負を持っていたらしく、後年堀井令以知が、「『言語学論攷』17編の内、一番良いと思うものは?」と訊ねた際にも本卒論を挙げたという。 |
| また、「(卒論以降は)だんだん馬鹿になっている」とも言っていた由。 |
| (http://www.let.osaka-u.ac.jp/~kamiyama/ogk_reikai163.html)。 |
| ;『言語民俗学』(1947年6月、秋田屋)。 |
| 1938年から1941年にかけて3回にわたって調査した内海洋と、1942年に赴いたベトナムでの経験を基礎として、「言語民俗学は要するに言語的等象線を準縄とし拠りどころにとして、時間的に空間的にさまざまの面から、民族なる人間現象を考察せんとする」(34頁)学問を提唱した。 |
| ほかに、「言語の構造について」と「国語と方言」が収録されている。 |
| ;『南魚星』(1948年3月、高桐書院)。 |
| 上記の内海洋とベトナムでの経験などをまとめた随筆集。 |
| (当時の状況を反映して、紙質・製本が悪いだけでなく、筆者の所蔵するものは最初の14頁が落丁している)。 |
| ;『古典と現代』(2005年9月〔復刻〕、ゆまに書房)。 |
| ;『比較言語学研究』(1949年、創元社)。 |
| 上記の通り3回行った内海洋(ミクロネシア)の言語調査の成果を、比較言語学(比較文法)の手法を用いて分析したもの:である。 |
| 特に、それまで世界の学界においても曖昧であったトラック語・ヤップ語・パラオ語・チャモロ語の帰属を、明確な根拠を示しながら解明した功績は大きい。 |
| 2005年8月、新装復刊、白水社。 |
| 文法には練習問題がついており、また途中からオウィディウスの『変身の賦』及びネポースの『ハンニバル』が教材に取り上げられ(初学者用に書き改めてある)、楽しく学習できるように工夫されている。 |
| マライ=ポリネシア諸語(南島諸語)のうちミクロネシア諸語を、音韻対応と文法現象(主に所有表現)を根拠に系統関係を解明した。 |
| 巻末に古期ジャワ語、マライ語、チャモロ語、トラック語、サモア語の例文を付す。 |
| (なお、『マライ=ポリネシア諸語』(1975年、弘文堂)に本編の補充・改訂編が含まれている)。 |
| ;『言語の研究』(1956年6月、有信堂)。 |
| 「日本語と南島諸語―系譜関係か、寄与の関係か」など、日本語の起源が論じられる際に、いまだに必読図書の1つに数え上げられる論文などを含んだ論集。 |
| ;『ヨーロッパの言語』(1968年12月、岩波新書、岩波書店)。 |
| これまでの類書が、言語名の羅列と、外面的な歴史の説明に終始してきたことに不満であった泉井が、各言語の内部関係に立ち入り、それを有機的にまとめあげた。 |
| アルバニア語、バスク語、ジプシー語といった小言語も丁寧に取り扱われているだけでなく、ウェネティー語といった印欧語学的に見ても注目されることの少ない言語をも取り上げている。 |
| ;『言語の世界』(1970年7月、筑摩書房)。 |
| 泉井の京都大学退官記念出版で、それまでに書かれた物の中から23編の論文と、京都大学最終講義が収録されている。 |
| (なお、具体的な選択を行ったのは、崎山理である)本書の構成は、I.言語学理論一般II.企画言語学と諸言語の研究III.書評IV.欧文論考V.言語の内界(最終講義)となっている。 |
| なお「最終講義」では、多くの話題に触れながらも、最後にアリストテレスの『形而上学』中の一語phūsisに言及し、それまで不可解であった語の解明を行っている。 |
| ;『マライ=ポリネシア諸語―比較と系統』(1975年7月、弘文堂)。 |
| 『世界言語概説下巻』(及び上記『言語の世界』に再録)に執筆したものを補充・改訂した「マライ=ポリネシア(南島)諸語概説」と、7編の論文からなる。 |
| ;『言語研究とフンボルト』(1976年11月、弘文堂)。 |
| 『フンボルト』(1938年7月、弘文堂書房)を全面的に改訂したものであり、泉井自身も「その後の考究によって、全面にわたって構成をあらため、各部分にわたって全面的に改変した」と言っているが、修正は主に加筆であって基本的な著述態度に変更はない。 |
| ただ、1960年代以降に表れたノーム・チョムスキーを中心にした言語理論を意識した部分がかなり多くなった。 |
| ;『言語研究の歴史』(1976年11月、岩波講座『日本語1』に所収)。 |
| イエズス会士の日本語研究から説き始めて、パーニニ、ギリシャ・ローマ、その後のヨーロッパに説き及ぶ、独特の言語学史。 |
| トカラ語に表れる「複個数」という特別な数詞から始まり、「双数」に説き及び、ホメロス、ウェルギリウスやダンテ・アリギエーリなどの作品を例証に、印欧語の数の問題を広く取り上げる。 |