| 岩田の隠居が、働かないで遊んでばかりいる男に説教をしている。 |
| 「ご飯をどうやって食べるんだ?」「箸と茶碗で」「そうじゃない。 |
| その米は何処から持ってくるんだ」「「米屋が運んできます」「そのお代は?」「踏み倒します」。 |
| 「そういう考えでは駄目なんだ!」と隠居。 |
| 「そりゃね、あたしだって、遊んでばかりいては駄目だって自覚しているんですよ。 |
| いろいろと商売を考えているんです。 |
| 例えば…そう、雀を捕まえるとか」。 |
| ラッカセイとお米、そして日本酒を買ってくる。 |
| お米を日本酒に漬け、十分に染み込んだ所で庭にザーッ!。 |
| 「上のほうで相談が始まりますよ。 |
| 『食べに行こうか』『罠かもしれない、止めよう』、侃々諤々となっていると、そこへ飛んでくるのが雀の難波っ子です」。 |
| 『難波のど根性を見せたる』と言って、難波っ子雀はお米を食べに行く。 |
| 無事に帰ってきたので、江戸っ子雀たちも下に降りて来てお米をついばみだして…。 |
| 「良く考えてくださいよ?お米は日本酒にしこたまつけてあるんです。 |
| そんなものをたらふく食べれば…」「雀が酔うのか?」「そうですよ。 |
| ヘベレケになったところで、かねてより用意のラッカセイをザーッ!」「"おつまみ"にしろって言うのか?」「違いますよ」。 |
| 酔っ払うとどうしても眠くなる。 |
| そこにラッカセイをまくと、雀たちがラッカセイを枕に熟睡してしまうはずだ。 |
| そこを箒と塵取りでかき集めれば…。 |
| 「それ、やったのか?」「やってみたんですよ。 |
| お米をザーッ、雀が降りてきてチュンチュン、ラッカセイをドバーッ!」「ほー。 |
| で、うまく行ったのか?」「その音でびっくりして逃げちゃった…」。 |
| 普通はそうだろう…と呆れる隠居。 |
| 「今のは冗談でしてね。 |
| 実は本命がもう一つあるんです」。 |
| 鷺を捕まえて、鳥屋に売りさばこうというのが男の【本命】。 |
| 鷺が池で、泥鰌か何かをついばんでる所へ乗り込んで行って、はるか彼方から呼びかける。 |
| 「『サーギー!』、遠くから呼びかけるから、鷺は油断してえさをついばんでいます。 |
| 少し近づいて、さっきより小さい声で『サーギー!』」。 |
| 近づくのとは反比例に、どんどん声を小さくしていけば、連中は気づかずにえさをついばみ続けるはずだ。 |
| 最後は、鷺の真後ろまで忍び寄って…。 |
| 「『…』」「なんだ?」「聞こえないでしょう。 |
| で、油断した鷺の頭を、トンカチでカンコンカンコン!ところで…鷺って何処にいるんでしょうか?」「不忍池…かな?」。 |
| その日の深夜…やって来ました不忍池。 |
| 鷺たちが羽を休めている。 |
| 本来なら、群れの一羽が起きていて、何かあったらそいつの合図でバーッと逃げるはずが、その見張りが居眠りしていたせいで…。 |
| 男のチープな計画通りに、みんなまとめて捕まった。 |
| 男は浮き浮きしながら、それを捕まえては縄で腰に結び付け始める。 |
| 腰の周りが三十羽の鷺で一杯になった…その時。 |
| 東の空が白んできて、鷺が目を覚まして一斉に飛び立った。 |
| 「ウヒャー、こりゃあサギ(鷺)だー!」。 |
| 男は高々と空に舞い上がった。 |
| そのうち、目の前に鉄の棒が一本ニュ~ッと見えてきたので、これ幸いとそれにつかまった。 |
| 「まだ羽ばたいてやがる。 |
| こんなのが居るから…飛んでけ!とんでっちゃった。 |
| ところで、ここは何処だ…?」。 |
| 下を見ると隅田川、向こうに見えるのが上野の山…つまりここは浅草だ。 |
| 「ウチの近くじゃないか、有り難いな。 |
| 雷門が見えるから、ここは浅草寺だな。 |
| 仲見世があって、後ろに本堂があって五重塔…フワー!!」。 |
| 五重塔の九輪につかまったまま、腰ぬかしてしまった。 |
| 一方、こちらは浅草寺の境内。 |
| 事件を知った人たちが集ってきたのだろう、ワイワイガヤガヤと賑やかになっている。 |
| そのうち、話を聴きつけた浅草寺のお坊さんが、四人集まって分厚い布団の四隅をしっかりと握って…。 |
| 「のぼりが出てきたな。 |
| 『コ』・『レ』・『ヘ』・『ト』・『ヘ』・『タ』・『ス』・『ケ』・『テ』・『ヤ』・『ル』?これへ跳べ、助けてやる…有難い!」。 |
| 男は助かりたい一心で飛び下りた。 |
| 運よく布団の真ん中にストーン!。 |
| ところが、あんまり布団をピンと張りすぎていたせいで、落ちてきた男はトランポリンに落ちたみたいに跳ね飛ばされ、塔の天辺に…戻った!!。 |
| 「また行きますよ!」。 |
| 男は助かりたい一心で飛び下りた。 |
| 運よく布団の真ん中にストーン!。 |
| 今度は少し力を抜きすぎていたせいで、四隅のお坊さんの頭が真ん中にきて、ゴツゴツゴツーンとぶつかり合った。 |
| 四人の僧侶の目からパッと火が出て…布団に燃え移って、そのまま火事になった…。 |
| というのだが、本当だろうか?。 |