| この項目の参考文献として「エドマンド・バーグ著『新ホイッグ党員から旧ホイッグ党員への訴え』について」森本哲夫(九州大学大学院法学研究科Jounaloflawandpolitics1969-02-25) |
| バーク保守主義はフランス革命により提示された<社会契約>ではなく<本源的契約>を重視する。 |
| 多年にわたり根本的に保持してきたもののなかに<本源的契約>の存在があり、祖先から相続した古来からの制度を擁護し、それを子孫に相続していくとする政治哲学である。 |
| この故に、自然的に発展し成長してきた不可視的な“法(コモン・ロー)”や道徳、あるいは階級や国家とともに、可視的な君主制度や貴族制度あるいは教会制度においても、ある世代が自分たちの知力において改変することが容易には許されない“時効の憲法(prescriptiveConstitution「規範的な、慣習的な、時効成立した、伝統に裏付けられた」「命法、憲法、基本法」のこと。 |
| 「時効の憲法」の邦訳については「金子堅太郎『政治論略』研究(日本大学精神文化研究所)六、付論・Eバークの憲法(Cinstitution)観」による。 |
| ”があると看做す。 |
| バークはフランス革命を激しく非難する一方で1688年の名誉革命を支持する。 |
| これは1688年の革命が人民主権説による立場からのものではなく、イギリス古来の憲政政策原理(旧ホイッグ主義)に沿ったものであり、民族固有の所産であり、必然性(necessity)から起こった革命であり、革命によりそれが保持されたためであるとする。 |
| 1688年革命は王国の古来の基本的国家組織<本源的契約>を国王の側から侵害があったことが原因であり、それを回復し保持するためになされたとする。 |
| バークはまたフランス革命に影響されたホイッグの同僚たちが支持する<不可譲の人民主権>説を批判する。 |
| すなわち人民主権説によれば、人民は、違反行為のあるなしにかかわらず王を処置しうる。 |
| 人民は、随意に、自らいかなる政体をも新たに設けうる。 |
| 為政者は義務だけを負わされ何の権利ももたない。 |
| 彼らの治政の存続期間は契約の固有の課題ではなく人民の意志次第である。 |
| また事実上<社会契約>がなされそれが拘束するとしても、それは直接契約に関わった人々だけを拘束するのであって子孫には及び得ない。 |
| バークは<社会契約>のもつ契約性の欺瞞を糾弾し、<本源的な契約>とはそのようなものではないとする。 |
| イギリス国民の個々が享受し相続してきた「自由」「名誉」「財産」は、この“prescriptiveConstitution”の擁護において、また、世代を超えて生命を得ている慣習・習俗や道徳の宿る“中間組織(intermediatesocial-group)”、例えば家族、ムラ、教会コミュニティ等の擁護において、守られると考える。 |
| これは社会契約論が唱える仮想された自然権が必然として要求するような種類の権利ではなく、現実のイギリスの歴史が自然と形成してきた摂理である。 |
| しかし同時にヒューム倫理学の系譜にのっとり経験論の限界にも言及しており、歴史から道徳上の教訓を引き出すことの危険性について「歴史とは、注意を怠れば、我々の精神を蝕んだり幸福を破壊したりするのに使われ兼ねない」「フランス革命の省察」半沢孝麿訳・みすず書房(p.177)とも述べている。 |
| このようなバーク哲学において、人間の知力などというものは、祖先の叡智が巨大な山のごとくに堆積している、古来からの“制度”には及ばない、矮小で欠陥だらけのものとの考えがある。 |
| それゆえ「理性主義」、すなわちデカルト的な人間の理性への過度な過信を根源的に危険視し、慎慮を提唱する。 |
| それはまた、個々の人間を多くの間違いを冒す不完全な存在と看做す、謙抑な人間観が横たわっている。 |
| 文明社会が人間の知力で設計されたものでない以上、文明の政治経済社会に仮に、人間の知力や理性に基づく“設計”や“計画”が参入すれば、その破壊は不可避となり、個人の自由は圧搾され剥奪されると考えたのである。 |
| 実際に、このバーク哲学の思惟と予見どおりに、フランス革命は、人間の理性を絶対視し、既存の教会制度を否定し「理性の神」を崇拝した結果、個人の生命をフル操業するギロチンに奪われ、財産を革命権力の恣意に奪われ、血塗られた無法地帯の阿鼻叫喚の巷をつくりだした。 |
| バーク哲学の主要概念は、慎慮(''prudence'')偏見(''prejudice'')、時効(''prescription'')、黙諾(''presumption'')、相続・世襲(''inheritance'')、法の支配(''ruleofLaw'')、慣習(''convention,customs'')、伝統(''tradition'')、私有財産(''property'')などである。 |
| 逆にバークが断固として拒絶した概念は、平等(''equality'')、人権(''rightofman'')、国民主権(''popularsovereignty'')、抽象(''abstruction'')、理性(裸の理性、''nakedreason'')、進歩(''progress'')、革新(''innovation'')、民主主義(''democracy'')、人間の意思(''willofman'')、人間の無謬性(''perfectibilityofman'')などである。 |