| 数々の名勝負を残してきた北斗であるが、全女時代は、万全な体調でタイトルマッチを迎えることがほとんどなく、何かしらの怪我を抱えたまま強行出場することが多かった。 |
| 手負いの北斗が必死に戦いを挑んでいく姿は、見る者を少なからず感動させた。 |
| 特に同世代またはやや上のブル中野、アジャ・コングたちとの絡みでは、クラッシュ引退後の苦しい時期を支えてきたお互いに対する思い入れの深さがひしひしと伝わってくる、情念がぶつかり合う死闘を生み出すことになった。 |
| 6月17日、ジャパングランプリ'90のワンデートーナメント1回戦で2年後輩の豊田真奈美と対戦。 |
| 押し気味に試合を進めた北斗だったが、場外へのプランチャをかわされた際に右ヒザがフェンスに直撃。 |
| 北斗は歩行不能の状態ながら試合続行を訴えたが、右ヒザの裂傷が中の骨が見えるほど深かったためドクターストップ負け。 |
| 豊田はこの後決勝で堀田祐美子を破り初優勝、明暗が分かれた。 |
| 1月11日川崎市体育館で豊田が保持するオールパシフィック選手権に挑戦。 |
| 後輩相手ではあるが同王座への初挑戦であった。 |
| 北斗は1月4日のWWWA世界シングル選手権試合でブルに挑戦した際に右腕を怪我し、筋肉が切れて石膏ギプスで固めた状態であった。 |
| 前年のジャパングランプリ'90のリベンジもかかっていたが、片手一本での挑戦には限界があり、豊田に開始早々ギプスを外され、腕を極めにかかられた。 |
| セコンドにはタオルを持った海狼組のパートナーみなみ鈴香が、今か今かとタオルを投げ込もうとしていたが、北斗は拒否。 |
| 最後は見かねた同期の堀田がタオルを投げ込み、TKO負け。 |
| 試合後、みなみが挑戦を表明した。 |
| 3月17日後楽園ホールのセミファイナルでアジャ・コングと時間無制限一本勝負のシングル・マッチ。 |
| 1月の豊田戦でも責められた右腕は完治しておらず、アジャのパワーファイトの前に10分31秒で完敗。 |
| 対戦後、アジャは北斗に共闘を提案するが、北斗は受けなかった。 |
| 7月15日後楽園ホールでブル中野の保持するCMLL選手権に挑戦。 |
| この時も、みぞおちの下の肋軟骨を2本、亀裂骨折しており、痛み止めを打っての強行出場で「これが最後のリングになるとしてもがんばって立ち上がる」と悲愴な覚悟で臨んだ一戦であった。 |
| 試合前には下田美馬がセコンドに付く(=弟子入りする)ことを直訴し土下座。 |
| これが3人でのラス・カチョーラス・オリエンタレス結成のきっかけとなった。 |
| 試合は一進一退の攻防が続いたが、全盛期にあったブルのパワーと怪我の影響で終始押され気味であった。 |
| ノーザンライト・ボムや変形パイル・ドライバーでもブルを沈めることができず、最後はトップロープからのギロチン・ドロップを返したものの、ブルがムーン・サルトに入るところで三田と下田がリングインしてブルを止め北斗をかばい、リング・ドクターを招き入れた。 |
| 様子をチェックしたリング・ドクターが「痛み止めを打って試合に送り出したが、もう限界で、これ以上は選手生命にかかわる」と試合を止めた。 |
| 試合直後に北斗は涙を流しながら、「誰が止めたんだよ・・・誰が止めたんだよ!いつもそうじぇねえか・・・いつもそうじゃねえか!そのベルトが欲しいよ・・・どうしても欲しいよ。 |
| ブルは即座にマイクをとり、北斗に指を差しながら、「お前プロレス好きなんだろ?好きなんだろプロレス!だったらよくなってからもう一回挑戦してこい。 |
| 今じゃ駄目なんだよ・・・自分の体、大切にしろ!」と返した。 |
| 4月2日横浜アリーナで開催された夢のオールスター戦のセミファイナルで、LLPWの神取忍と対戦。 |
| 昨年以来の遺恨、記者会見での乱闘騒ぎなどですでにボルテージは最高潮に達していたが、試合はそれを遙かに上回る凄惨な血みどろの戦いとなり、対抗戦時代史上、そして日本の女子プロレス史上でも屈指の名勝負となった。 |
| 開始早々、双方挑発しあう中、北斗が神取の左頬に右ストレートを放ち、神取が昏倒。 |
| 北斗はすかさずマイクを取り「おい神取、てめえの実力ってのはそんなもんか!立ってみろ!起き上がれ!」と叫んだ。 |
| さらに場外戦で、実況席の机の上でツームストーン・パイル・ドライバーを放とうとした北斗を神取が切り返してパイル・ドライバー。 |
| 双方が大流血した後も延々と凄惨な戦いが続き、北斗のノーザンライト・ボム、神取の逆ノーザンライト・ボムでも決まらない。 |
| 最後はグーパンチでの殴り合いになり、クロスカウンターから北斗が神取に覆い被さって、30分37秒、北斗がフォール勝ちを収めた。 |
| 血まみれの北斗は座り込んだまま再びマイクをとり「神取ッ、聞こえるか?お前は、プロレスの心がない!プロレスは、プロレスを愛する者にしかできない!柔道かぶれのお前に負けてたまるか!」と叫んだ。 |
| この試合をメイン・レフェリーとして裁いたのは全女の松永兄弟の一人、松永俊国であった。 |
| 普段は一線を引いていた俊国は、ここぞという大一番のみにレフェリーとして登場することになっており、全女サイドがこの試合をいかに重く見ていたかがうかがえる。 |
| 10月9日東京ベイNKホールで開かれたレッスル・マリンピアード'93のメインイベントで、アジャ・コングと対戦。 |
| 当初はアジャの保持するWWWA世界シングル王座を賭けたタイトルマッチであったが、手術して2週間、全治3か月と診断され、神経に刺さっていた半月板を半分切除した左膝、さらに右足の十字靱帯が切れ、背骨が2本折れていたという最悪に近いコンディションであった北斗は試合前に、タイトルマッチを辞退したいと発言、アジャも快くそれを認め、その代わりこれぞ全女という試合を見せると観客に約束した。 |
| こうしてノンタイトル戦となった試合はやはり北斗の膝がまともに動く状態ではなく、途中でリング・ドクターがチェックに入るほどの厳しい試合展開となったが、空中技など惜しげもなく繰り出し、最後は19分30秒、アジャの雪崩式水車落としに敗れた。 |
| 11月20日東京ドームで開催された「憧夢超女大戦」興行におけるV☆TOPWOMAN日本選手権トーナメント(優勝賞金1500万円)での戦いを最後に引退すると表明。 |
| 1回戦ではLLPWのイーグル沢井と対決。 |
| イーグルはいきなりサンダーファイヤー・パワーボムを放つなどラッシュをかけたが、11分8秒、ノーザンライト・ボム2連発で退ける。 |
| 準決勝ではFMWのコンバット豊田と対戦。 |
| メインイベントとなる決勝では豊田真奈美、ダイナマイト・関西を破って勝ち上がってきたアジャ・コングと対戦。 |
| 静かな立ち上がりだったが、アジャがトペの際にトップロープに足を引っかけて右膝が外れてしまい、片足同然の状態での戦いとなった。 |
| 滅多に怪我の部位を痛がらないアジャが悲鳴を上げるほどの重傷で、試合続行は不可能に近く、ちょうどNKでの試合と立場が逆転した。 |
| 北斗は下を向いたまま言葉を発することなく、静かに涙を流していたが、やがてマイクを取り、「アジャ・・・いつもよぉ、生意気なこと言ってんのによぉ、なんでこんなときによぉ、言葉が見つからねえんだよ。 |
| もう一回巻いてみせてくれ(ここでアジャはさらに号泣)、アタシが唯一取れなかったベルト、巻いてみしてくれ」と言って、赤いベルトを座り込んでいるアジャに強引に巻き付け、二人で抱き合って泣き続けた。 |
| 最後に北斗は「お前ら、アタシのことがもっと見たいか!」と観客にアピール、観客が北斗コールで応えると、「来年、東京ドームがあるなら、その時に必ず戻ってくる!」と締めくくった。 |