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第17回 漢訳仏典を読む イラスト ヨシザワスタジオ 漢訳仏典とは、インドや西域の言葉を漢字に翻訳した仏典のことである。中国人にとって、外来の宗教であった仏教が定着するためにまず必要な基礎作業は翻訳であった。これは後漢代(一~三世紀)から宋代(一〇~一二世紀)までの約千年にわたって行われた大事業であった。数多くの翻訳僧の中で、特に秀でた鳩摩羅什、真諦、玄奘、不空の四人を「四大訳家」と呼んでいる。 漢訳仏典は膨大であるため、ここでは大乗経典である『法華経』と『華厳経』とを紹介するに止める。そもそも大乗仏教は、思弁的となり大衆とは離れた存在になった部派仏教を批判し、その教えを「小乗」と呼び、また声聞、縁覚と呼んだのであった。こうした声聞、縁覚に対して「菩薩」の優位を説いたのが大乗仏教であったが、『法華経』ではそこから一歩進んで声聞、縁覚、菩薩の三者を総合する立場を打ち出す ... もっと見る
第17回 漢訳仏典を読む イラスト ヨシザワスタジオ 漢訳仏典とは、インドや西域の言葉を漢字に翻訳した仏典のことである。中国人にとって、外来の宗教であった仏教が定着するためにまず必要な基礎作業は翻訳であった。これは後漢代(一~三世紀)から宋代(一〇~一二世紀)までの約千年にわたって行われた大事業であった。数多くの翻訳僧の中で、特に秀でた鳩摩羅什、真諦、玄奘、不空の四人を「四大訳家」と呼んでいる。 漢訳仏典は膨大であるため、ここでは大乗経典である『法華経』と『華厳経』とを紹介するに止める。そもそも大乗仏教は、思弁的となり大衆とは離れた存在になった部派仏教を批判し、その教えを「小乗」と呼び、また声聞、縁覚と呼んだのであった。こうした声聞、縁覚に対して「菩薩」の優位を説いたのが大乗仏教であったが、『法華経』ではそこから一歩進んで声聞、縁覚、菩薩の三者を総合する立場を打ち出すようになった。「唯だ一仏乗のみ有り。亦た二も無く三も無し」(方便品)と説く『法華経』の一節は、三乗の上に一乗が存在することを高らかに説いた教えである。 大乗仏教では唯心思想も発達した。盧舎那仏の悟りの世界を説く『華厳経』では、「三界は虚妄にして但だ是れ一心の作なり」と説く。三界(仏教の中でのすべての世界)は虚妄な存在であり、それは人の心が作り出すものであると説かれている。さらに「心、仏、衆生、是の三は無差別なり」と説き、仏と衆生、そして心の本来的な一致を説く。 石に刻まれた一切経(大蔵経)。中国・北京の南西に位置し7世紀初め,隋代から造営が始まった房山雲居寺が所蔵する
写真 田村 仁 中国で流布した経典は、必ずしもインドの原典を翻訳したものだけではない。その中にはインドの原典からの翻訳を装っているが、実際には中国で成立した経典と考えられるものが数多く存在する。それらは真経に対して偽経(疑経)と呼ばれるが、中国人が仏教に求めるものが反映されているという点で、宗教的には大きな意味をもっている。 代表的なものに『父母恩重経』がある。これは中国固有の思想である儒教の倫理思想、とくに「孝」を盛り込んだ経典である。インドで誕生した仏教は出家を前提としているが、中国では家を捨てることは不孝である。そのため仏教と孝とを結合させる必要に迫られ、父母の恩に応える方法として「能く父母の為に福を作し経を造り、あるいは七月十五日を以て能く仏槃・盂蘭盆を造り、仏及び僧に献ぜば、果無量なるを得、能く父母の恩に報いん」と説く。 漢訳仏典は、中国をはじめとして朝鮮、日本など東アジア仏教世界に共通した聖典であった。なお現在では『大正新脩大蔵経』(大蔵出版)に収録されている漢文仏典は、非営利の利用にかぎってインターネット上で検索ができるようになっており( http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~sat/japan/ )、研究に大きく寄与している。 (文・佐藤 厚 さとう・あつし 一九六七年、山形県生まれ。専門はインド哲学・仏教史。東洋大学非常勤講師) 戻る
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丘山新
著者情報 丘山 新(オカヤマ ハジメ)
1948年、東京生まれ。京都大学理学部卒。東京大学大学院修了。インド哲学・仏教学を専攻。ミュンヘン大学客員研究員な... |
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佐古 年穂 サコ トシオ 研究者リゾルバーID: 1 科研費研究者番号 : 7 所属(KAKENから): 駿河台大学/現代文化学部/教授 (※注)この項目の値は科学研... |
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